柏強制収容所

 ここ最近全然ブログを更新していなかった。

 単純に書くことがなかったからで。別に今回も書きたいことがあるわけではない。存在を思い出したので近況を記すことに。

 

 いきなりだが、私は現在囚われの身となっている。これまでの学生としての職務怠慢が災いし、柏強制収容所という場所で服役することになったのだ。世に言う柏送りである。

 災難ではある。しかし私も無計画に判決までを過ごしてきたわけではない。以前、比較的都心にも近い本郷刑務所での懲役を見越して、近くまで引っ越しておいたのだ。しかし、現実は厳しかった。こればかりは私の実力不足である。そんなわけで、春から柏での生活が始まったのだった。

 柏強制収容所は基本的に24時間体制である。歓迎はされないが夜間の活動も不可能ではない。とはいえ比較的21世紀的な価値観が浸透しているのか、毎日夜には帰宅する雰囲気が漂っており、私もその空気に甘えさせてもらっている。

 肝心の収容所内での懲役だが、私にはポンコツ機械の世話が課されており、今月末にも経過報告書の提出とともに刑期を終える予定である。

 

 冗談はこのくらいにしておいて、ここでは、柏収容所での生活を通して得られた貴重な体験についてまとめておくことにしよう。

 

 まずは立地について言及しておく。柏というのは都心から遠く離れた僻地にあるのだが、おおよそ人が住むような場所ではなく、事実として江戸時代には馬が住んでいたらしい。それに見渡す限り平地が続き、かといって水田があるわけでもなく、趣の欠片すら見出すことが困難である。唯一ららぽーとが救いといえようか。

 いずれにせよ、東京23区内に住む都会っ子としては掴みどころのない街であり、この先の生活に絶望していた。しかし、この収容所にも実は希望は存在していたのだ。

 

 私が柏強制収容所で愛するものは大きく二つ、景色と動物である。

 まずは景色から。柏という場所は先述の通り何もない。悲しいほどに何もない。それゆえか、遮るものもなく夕日が非常に美しいのだ。日の暮れとともに空や雲が赤く光る。これには心を揺さぶられてしまった。

 それと動物についても。先ほど柏には何もないと言ったところだが、資本主義の影響を受けてか、収容所周辺にも徐々に近代化の波が押し寄せつつある。ここ15年ほどのことらしい。宅地開発が進み、図らずも収容所の敷地が動物たちにとって緑の残るオアシスとなってしまったのだ。以下に私が出会った動物(もふもふ)たちを列挙していく。

  • ホンノウサギ
    • もふもふ。うさたんである。でもペットショップのうさたんとは違う。
    • ペットのうさたんはアナウサギ(rabbit)であり、もともと地中海周辺にいたうさたんである。日本にはいなかった。
    • 柏にいるのは野生のうさたんであり、これはノウサギ(hare)である。座ったときに前脚が立つからすぐにわかる。あなうさたんほどかわいくはない。
    • 走るとかなり速い。夜に見られることが多いが、たまに昼でも見られる。
  • ネコ
    • かわいくない。たぶん野良猫。無視。
  • ヒト
    • なぜか雄個体が圧倒的に多い。環境棟周辺に行くと雌個体が若干増える。
  • キジ
    • 桃太郎のあれである。派手。
    • 雄と雌で色が全然違う。両方見た。歩いていることが多い。
  • カルガモ
    • 収容所正門前の池にたむろしている。常に数十羽待機しているので探す必要はない。平和に過ごしている。
  • キジバト
    • 日本にもともといた鳩である。基本的に単独行動。でーでーぽっぽー☆と鳴くのはこの鳥である。
    • 公園にいるのはカワラバトで外来種。あれはかわいくない。ばっちーよっ。
  • カワセミ
    • 瑠璃色の美しい小鳥である。
    • 水辺におり、カルガモの池周辺でよく見られる。水面近くを飛ぶ姿は皆者を釘付けにするであろう。
    • 鳥部門ではこれが一番驚いた。

 こんな感じであろうか。

 

 最後に軽くまとめを。

 私はそろそろ柏強制収容所を後にし、晴れて本郷に送還される。

 しかし柏も何もかもが悪かったわけではない。教官の丁寧な指導、バーベキュー、海鮮丼、自然、などなど。素敵な経験もたくさんできた。私はおそらく一つの場所に長く留まれる人間ではない。今後もいろいろな場所を放浪していると思う。その思い出の一つとして、この半年間を忘れることはないだろう。これもまた人生といったところか。運命に思いを馳せながら、残りの短い刑期を全うしたい。